dZi Beads  story  4

下記の設問は以前当店のブログ内で皆さんにお伺いした内容をもとに、

再編集したものになります。

 

ちなみに検定試験2級というのは

当方で独自に設けたもので、広く普及する世界のものではありませんが、

ジーを見る上で非常に役に立つ内容ですのでみなさんも解答を見ずにまずは挑戦してみてください。

ジービーズ検定試験 2級
 
問 :
このチョンジーには方側の開口部からややクラックが見られます。
こちらのクラックはいつ頃に発生したものと考えられるでしょうか。
写真からその根拠を示しつつ、
古の人々の想いも想像しながら論じてみてください。
 
 
 
 
模範回答:

 

白黒白黒と交互に走る文様が石の中央に見られるこうしたチョンジーは

題材のジーにも見られるようにその特徴的な文様から両端にかけて

薄茶、もしくはアイボリーのような色がのる特徴がよく見られます。

 

 

今回のジーも片側はあきらかにその様式に従っていますが、

その反対、指摘のクラック側は同色となっておらず、

それはこの石の材質構造に影響されているということを想像させます。

 

 

しかし、材に対して色が乗る乗らないの問題はともかく、

古の人々がそこに対してアプローチをしないということは過去の事例からも考えづらく、

その点を踏まえクラックの箇所を詳しく見ると、

やはり、クラックを境にしてCの写真から色の濃淡の違いがはっきりとした差となり現れているのがわかります。

つまりクラック側にも反対と同様の措置を試みていたということです。

 

 

先にも触れたように同様の仕様を目指したけれども片側は色ののりが悪かったわけですが、

クラックを境にその構造の差からか、濃淡が見られますので、

このクラックの発生は少なくともジーという文様をのせる以前、

1800~2200年前より前のものということがうかがえます。

 

 

 

上記を踏まえて古を探ってみますと、

なぜクラックしたものを敢えて選んでいるのか・・

という素朴な疑問が出てきます。

 

 

それには大きく二つの見方があると考えますが、

その一つはクラックよりもなによりこの石という存在を大事にしたという視点です。

 

 

ジーの誕生よりも前、古の人々が瑪瑙をお守りにしてきたという事実は考古学上はっきりしています。

そして、無数の出土品から感じるのはその瑪瑙が特徴を持っていたという点です。

例えばそれは瑪瑙の持つ特有の縞文様を生かし眼を意識させる絵であったり、

水晶と瑪瑙の混在する石を敢えて選んでいたということだったりします。

 

 

こうした事例を基にこのジーに想いを巡らせてみると

今回のジーもクラックはあるけれどもそれより重要な要素が

この石にあったからこそという思考が見えてきます。

つまり、色の乗らないことをわかりつつも透明な世界を抱く石への想いをここに描き、

また薄く茶色に乗った側にも眼を意識させる箇所があるからこそということです。

 

 

二つ目はもともとある人と共に純粋なお守りの石、

瑪瑙として長きを生きた愛しき瑪瑙を、

後にジーへと移行させてたということも考えられます。

そうであればクラックの有無はその想いにより消されますので納得も得やすいわけです。

 

 

いずれにしてもこの石がいかに古の人々にとって大切にされてきたのかということをうかがわせる

非常に魅力的なジービーズだと言えると思います。

 

 

 

 

 

 

 

解説:

 

 

ここでクラックの発生時期を読み解く上で大事な要素となるのが、

こうした代表的なチョンジーの姿をどの程度普段から頭に描けているかというところです。

そしてこの点ががかなり大きな分かれ目になると思います。

 

 

回答にもあるように両端が薄く染まっているということを理解できていないと、

クラック側にも同じ工程を踏んでいたのではないかという発想が起こらない可能性があります。

まずこの時点でジーをある程度見てきているかどうかの差異が読み取れ、

回答者の力量を測ることができます。

 

 

そして上記の点に気づけた回答者が次に何を見なければいけないかという点を

この設問ではさらに聞いています。

つまりクラックによって色や文様がずれるというジーをどれほど見てきているか

という次のステップです。

ジーにはクラックを境に文様がずれる絵をよくみることができます。

これはクラックしたときに石がずれたのでは当然なく、

乗せた文様が意志通りそのクラックを超えることができないために起こる現象です。

 

 

今回のチョンジーもこの現象がこの写真からは実は2か所感じ取ることができます。

それは解答例で述べたクラックを境にした色の濃淡(写真-a)と

4本目の白線(写真-b)がクラックを境にやや歪んでいる点です。

 

 

この2つに気づくことができれば、

それは明らかにこのクラックがジーを焼きいれる前のもの、

すくなくとも文様が完全にのった後ではないうことがわかりますし、

そこからもう一つの問である古の人の想いに繋がっていくわけです。

 

 

 

つまり上記のことが理解できれば、

クラックの入った石を目の前にして、

皆さんだったらその石を選びますか・・・

微妙ですよね・・・

それでも選ぶ理由って何でしょう・・・

とういう視点にはじめて立つことができます。

 

この視点に立つためには

クラックの入った時期がいつなのかを見極めることがやはり重要となってくるわけです。

 

 

ですから、ジーを見る時は文様云々だけではなく、

小さな痕を細かく見ていくことが重要になってくるわけです。

 

 

 

補足:
 
ブログ等では何度か記載しておりますが、
中央バンド状の文様の外側の薄茶等の色について、
全てにこの要素が見られるわけではなく、
また、中央の文様のように意図的なのせ方であると言い難いのがこの脇の部分です。
 
ただ、そうした要素を感じさせるチョンジーが多いのも事実ではありますので、
そこをいかに普段から描けるかというところはやはり大きなポイントとなります。
 
また、それがそもそも天然の色味である場合もたくさん見られますので、
その違いを見極めながら考察していく視点も重要です。
 
今回の場合は薄茶色の部分に一カ所眼のような文様があり、
そこに違和感を感じることができます。
 
これは模範解答で述べた要素をうかがう材料ともなりますので、
先の推測をベースに考察していくことが望ましいといえます。
 
 
さらに、この様な微妙な色味の世界は眼の入るジーにも感じさせるものが実はかなりありまして、
おそらく石に文様を入れる際に行う熱処理により、
時として石全体にわずかに変化がおこるケースがあるのではないかと考えています。
それが今回であれば両脇の色に関係してくるのではと思うわけです。
この点はまた別の機会に例を示しつつお話をさせて頂ければと思います。

 

 

 

次に、今回のジーでもう二つだけ考えなければいけない要素が実はあります。

 

それは文様を焼き付ける段階、つまり燃焼中にクラックが入ったという点。

そして、古の人々の感覚の中にクラックなんてそもそも大して気にもしていない・・・

この二つです。

 

いずれもクラックの時期を特定することに影響はありませんが

前者は文様を入れる直前ということになりますので、

時期を特定するには大きな差ではありませんが、

その後に続くストーリーにはやや変化が起こりますので

こうしたケースも含めて論じることができれば尚、良いかもしれません。

 

また後者は実は長くアジアの人々と接しているとかなり考えておかなければいけない

要素ではありますので、

あらゆる可能性を排除しないためにも

みなさんも心の片隅に入れておいてもいいと思います。